ブランド品の財布買い取り

ブランド品の財布買い取りをしていいってことなのかい?

男は唐突に話しかける。
その場は喧騒としており、誰が誰に対して話しかけたというのは実際のところよくわからない。
男は勇気を振り絞って頑張って声をあげてみたのだ。

 

実際のところはなにがどういうふうにブランド品の財布買い取りの話になっているのかというのは
実際全く分かっていないというのが実情だったりするのだが、そんなことは些細な問題であろうということについては

 

差して問題ではないのである。

 

ちくしょう、なんで俺の声は届かないんだろうか。
今この瞬間に声をあげようとすると、
周りの人間が押しつぶしてくるのだ。
誰一人として、男に接触していないのにもかかわらず、彼の肺は無色の力に圧迫されている。

 

喉まで出ているのだ。
しかし声が出ない。
勇気が出ない。

 

たった一言。
これはおいくらですか?と聞くだけなのだ。
しかしシーンと灰色が基調となった店内の重さは器官から上がろうとする一言を押しとどめてしまう。

 

これほど勇気がいる行動が他にあろうか?
店員にこの財布は買い取りしてもらったらどれぐらいの価格になりますか?
というのが聞くことができるだろうか?そんなことはできはしないのだと僕は思う。

 

なあこういうのってどうしてできるのかな?
もう少し店員さんのファッションセンスが悪かったりすればいいのかな?
もう少し店員さんの人相が優しそうな人ならいいのかな?
そういうようなことが頭に多い浮かぶ。

 

彼は針の筵状態でどうしてもその場から動き出すコトが出来なかった。それが勇気の代償というものである。
その財布のブランド買い取りは結局3000円だったという話だから、これまた笑えない冗談なのかもしれない。


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